ジョブ・チェンジ

金融機関のクォンツがAI企業にラブコールを受けているというニュースが目に入った。
AI企業(LLM開発)が新人レベルのクォンツに対して30万ドル(ボーナス抜き)で提示されているとか。(生活費も高いから日本だったら2,000~2,500万円ぐらいの感覚か?)
記事によれば、ユーザーへの応答速度を競っているAI企業が、アルゴリズムの遅延を最小限に抑える技術などを有するクォンツを高く評価しているという。非構造化データの解析を伴うということなので、クォンツ運用でアルゴトレードの方かな?
ロケット・サイエンティストがウォールストリートに流れ、さらに21世紀でもっともセクシーな職業(死語?)へという大きな流れの中で、専門スキル人材の極端な需給ギャップによるものと思われるが、しばらくは続くのだろう。

広い意味でセルサイド側のクォンツ(筆者はセルサイド側の経験が大半で、バイサイド側のHFTは未経験)も含めて言うと、GPT-4の段階で既に新人クォンツ以上の性能と思っている。
「Pythonで3万件のオプションのフルリスク計算して」をミリ秒未満で処理するコードを数値チェックや効率化などの指示のやり取りで30分で完成させたり、アメリカン・モンテカルロ法の試作品をものの数分で実装してきたり(GPT3.5では不可なタスクだったのに)。
コーディングだけじゃなく、トレーディング業務やリスク管理業務も(一般人と比べると)精通していて、その上、会計や税制や法務や翻訳や、いやもうなんでも、新人以上に頼りになる存在となっている。なのに支払うべき報酬はたったの数万円。金融工学が仮定するノー・フリー・ランチの大原則に従えばこの裁定機会は近い将来、解消されてしまうはずだ。
次にくる職業はなんだろうか?

出典:Bloomberg News「年収4000万円、AI業界が狙うクオンツ人材-ウォール街から流出加速/原題: Open AI, Perplexity Make Pitch to Recruit Quant Traders From Banks」(2025年8月11日)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2025-08-11/T0OATAGOYMTF00

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AI三銃士 その②